通訳者のお手本は〇〇〇!

「滑舌を良くしたい。
アナウンサーのように流暢に話したい。」

そう望む通訳者も少なくないようです。

中にはアナウンス学校に
通おうと考える人もいます。

他の職種に学ぶ姿勢は素晴らしいのですが、
通訳者に適した語りは
アナウンサーの語りでしょうか。

私はアナウンサーの語りを通訳者が
見習うのはあまりおすすめしません。

かえってわかりにくい通訳になると
考えています。

アナウンサーはどんなニュースとも
ある程度の距離を置いて読み上げる
ことが求められます。

「阿佐ヶ谷の木造二階建てアパートが全焼し
住民のおじいさんが焼け出された」

というニュースの次に

「メジャーリーガーとして活躍する
日本の選手が満塁本塁打を打った」

というニュースを読まねばなりません。

いちいち感情込めて読み上げては大変。

聞く方も疲れるでしょう。

 

巨人5連敗などというニュースはさらに厄介です。

大泣きする人もいれば、

大笑いする人もいるでしょう。

 

誰かにぴったり合わせることなどできません。

 

誰からも少し距離をとった語りが
アナウンサーには求められます。

しかし通訳者は違います。

語り手は聞き手に
伝えたいメッセージを持って
会議や講演で語ります。

 

アナウンサーのように
誰からも距離をとるのではなく
通訳する相手、語り手に
寄り添うことが大切です。

今は便利になりました。

通訳する相手の語り口に
通訳当日を迎える前に
耳を慣らしておくことも
可能です。

オンラインミーティングで
打ち合わせをしたり

過去の講演の録画を
見せてもらうこともできるでしょう。

 

さて、通訳する相手の語りを
前もって聞く機会がない、
当日はじめて声を聴くことになる
場合はどうしましょう。

それには、
ふだんから多様な語りを耳にして、

自分でも多様な語りを試して
耳と語りを鍛えておくよう
おすすめします。

何よりのお手本は落語家さんたちです。

落語家さんは1人で何人もの声を
自然に語ります。

誰を訳しても同じ語りになる
通訳者もいますが、
もったいない。

落語家さんは多くの声を
備えながら、自分の芸を
ひとすじに育てます。

寄席ともなれば
前座、二つ目、真打と
成熟の段階をあらわに見る
こともできます。

さて、あなたの通訳は
前座?二つ目?

それとも真打?

なにより心おきなく笑える時間を
お楽しみくださいね。

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