プロの通訳を頼んだのにがっかりの原因は…

とある海外発のホリスティックセラピー。だんだん人気も出てきて海外講師の講座も増えてきたそうで。連日となると関係者のボランティア通訳ではなかなか大変。いよいよフリーのプロ通訳さんを頼むことになりました。

かつて最高クラスだっという彼女の通訳謝礼は1日12万円。当日黒のスーツでさっそうと現れた通訳さんらしい姿にみんな安心。ところが始まってみると…

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だめだこりゃ。

講師は立って聴衆の間近で話しているのに、通訳さんは後ろの小さな机にかじりついて座っています。メモとりに忙しく、視線は下を向いたまま、聴衆とみることがありません。

調子は安定している…というか一本調子。講師とは声の調子がまったく違い、聞いていると疲れます。まるで違う音楽を交互に聴かされるのですから。「えー」「しかしながら」と通訳独特の堅い口癖も気になります。

よく聞くと専門用語があやふやで、関係者なら間違えない数字のケタが違っていることも…。専門用語もどうも英和辞典に載っているような訳語。講師の頭の中の風景が見えていないのは明らかです。

聴衆からの指摘を休憩時間に確認すると、「私は通訳ですから専門家ではありません!」と怒ってしまいました。

急に交代というわけにもいかず2日お願いしましたが、がっかり。主催者は「これなら身内の留学がえりのスタッフのほうがまし!」と。それではセラピー自体が趣味レベルにとどまるのに…それにしてもなぜこんなことに?

通訳の仕事の8割は聴くこと、準備すること。
通訳の仕事の8割は聴くこと、準備すること。

この通訳さんとは事前の打ち合わせをしていなかったというのです。考えられない…

面倒でも通訳者を呼び出して、顔を合わせてがっつり打ち合わせをしてください。その時点で専門知識を軽く見ている、滑舌・発声はよくないと思ったら断ってよいのです。

通訳の仕事は事前の準備が8割です。事前の資料請求、打ち合わせをしない、文系オンリー、語学屋さの通訳者は避けましょう。

プロならばしつこく事前打ち合わせをするものです。そして当日はすっかりその業界の人になり切って登場。専門用語もなにごともなく話せるのです。

通訳に大切なのは語学力だけではありません。むしろ話す人、聴く人の頭の中の地図を把握する力、新分野を学習する力が不可欠です。この力を鍛えるには新米の頃にいろいろな分野に自分をさらすこと。専門分野に落ち着く前に、ある程度の緊張感をデフォルトにしておきましょう。専門分野が鈍らないためにも。

半端な英和辞典ほどやっかいなものはありません。横浜CATSではネット時代の通訳者の準備方法もお話ししています。

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