通訳の準備 検索しても何も出てこない場合は

おめでとうございます!それは素晴らしい仕事を頼まれたということです。ゼロを1にする仕事です。まだ日本にはない、でも世界のどこかにあるものを日本に持ってくる瞬間に立ち会っているということです。大変だけれど張り切っていきましょう!

これをごく簡単な図で表すと…

「検索しても何も出てこない」のは専門知のさらにその先の「未知」あるいは「日本語にはない概念・単語」を検索しているからです。

荒っぽい図ですが、これを見ればいきなり素人検索しても逆位遠回りなこともはっきりしますよね。「バイオマスボイラーですね、わかりました」で検索するとせいぜい一番外の輪の一般知をひっかけるくらいです。ボイラー関係の会社のFAQページや製品案内は面白いけれど、業界の動向を把握するには向きません。遠回りです、目指すは中心の黄色い輪なんですから。

依頼主の思いをまず聴いて、というのは「専門知」の輪から勉強をスタートするためです。

専門家である依頼主が門外漢だけれど言葉のスペシャリストである通訳者を頼んむのは、日本に新しい何かをもたらすため。日本にとって新しい海外の情報にはまだ名前がついていなくてもちっともおかしくありません。

だから、事前準備で海外の専門用語をごっそり集め、単語集を作ったら、いちど依頼主に送ることです。新しいものに古い名前をつけてしまっていないか確認するためです。(あとは…自分に万が一のことがあったときのピンチヒッターのため。さいわいそんなことはまだ一度もありませんけど)

新しい名づけは通訳が終わった後も続くことがしばしばです。なぜなら、通訳当日になってはじめて実物が動いているところを見ることも多いからです。

「なんだ、そういういことか」「へえ、こんな感じなんだー!」「じゃあ、こういった方がいいかなあ。」「無理に訳すと釜戸や囲炉裏のイメージに成っちゃう」「全部カタカナはイメージが安易すぎ…」「日本語とカタカナをちょっとずつまぜたら?」

新しいスタンダードを一緒に作れる仕事なんてそうそうあるもんじゃありませんよ。専門用語を覚えればすむ既存の領域よりずっとやりがいがありますよ!

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