25年前、通訳者は人を心から励ませると教えてくれたのは

今日は素敵な通訳をされた
懐かしい方をご紹介したく思います。

 

大畑豊(おおはたゆたか)さん
です。はじめて会ったのはもう
25年前のこと。

 

大畑さんの、若い修行僧の
ような佇まいを今も覚えています。

大畑さんはプロ通訳として
生計を立てていた
わけではありませんでした。

アレン・ネルソンさんという
元海兵隊員のベトナム帰還兵の方の
専属通訳として、日本中を一緒に旅して

戦場の現実を訴えて
いたのです。

Interview with veteran and peace activist Allen Nelson (pt. 1) : Indybay

大畑さんの通訳は自然で正確、
優しく、静かでぬくもりが
ありました。

 

大畑さんの通訳をアレンさんが
心丈夫に思っていたのは
ちょっとしたしぐさにも
明らかでした。

 

アレンさんはニューヨークの
ブルックリンで貧しい
母子家庭に育ち、
母に楽をさせたいと
10代のうちに
海兵隊に志願します。
(お母さんは泣き崩れたそうです。)

厳しい訓練、沖縄駐留を経て
あれよあれよという間に
ベトナムに送り込まれます。

 

ベトナムのある村を皆殺しに
するよう命令を受け、
アレンさんが
人影を籔の中の洞窟にまで
追い込むと、

なんとその人影は産気づいた少女。

赤ちゃんが産まれた瞬間、
アレンさんは思わず両手を
差し出してその赤ちゃんを
受け止めたそう。

少女はアレンさんから
赤ちゃんを奪い返すと、
森の中へ走り去っていきました。

 

 

この瞬間、アレンさんの中の
何かがよみがえりました。

 

とはいえ帰還後は長くPTSDに
苦しみました。

 

だからこそ
戦場の現実と平和の尊さを伝えて
生きようと決心します。

大畑さんの通訳にはアレンさんへの
敬意と共感が満ちていました。

 

日本語は平明かつ丁寧で、
語り口はとても優しいものでした。

 

プロにありがちな平板な
通訳口調とは無縁です。

 

わざとらしく感情を
込めることもなく、
あくまで自然。

そして全くメモを
取っていませんでした。

当時まだ英語教員だった
私は驚いて、どうしたら
そんな風に通訳できるのですか、
と尋ねました。

 

すると大畑さんは
「こればかり何回も
聞いていますから」
とこともなげに笑って
謙遜されました。

でも毎回新しい気持ちで
聞いていらしたのは確かです。

 

だからメモが
いらなかったのです。

 

心でありありと聴いて、
心でありありと観て
心で通訳していたのです。

 

大畑さんの通訳を聞いていると、
行ったことのない
ベトナムの風景が
見えてくるようでした。

 

その後私は教壇を追われ、
人生の谷間で、自分を消して
聴き入る通訳養成に
心救われました。

けれど、大畑さんのような通訳を
通訳学校で聴くことは
ありませんでした。

どうも私は、大畑さんにあって
ドライな通訳にないものは
何だろう?

 

それを名人芸ではなく、
誰もが習得できるように
するにはどうしたらよいのだろう、
と模索してきたように思います。

 

それがいつか皆さまの喜びに
つながり、少しでも恩送り
できたら、本当にありがたいことです。

 

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