「通訳はなるべく短く」が悪循環のモトである理由

ルドルフ・シュタイナーといえば
日本ではシュタイナー学校を
連想する人が多いでしょう。


でもヨーロッパでは
シュタイナーの洞察に基づく
医療・農業も知られています。

私自身、シュタイナーの医療、農業の
通訳を最優先してきました。


人間も宇宙、自然の一部であるとは
よく聞きます。

でも、そのことを詩的に深く、
システム的に緻密に語る
シュタイナーの思想を読み解く喜びは
何ものにも代えられません。

シュタイナーが現在のドイツ出身
ということもあって
たくさんの講座が
ヨーロッパから講師を招いて
開かれています。

参加者は人間の都合優先の
世の中をなんとかしたいと願う
とてもマジメな人たちで…

せっかくの海外講師に
できるだけたくさんのことを
教えてもらおう!!と前のめりです。

ある友人によると、
関西のある講座では
プロではない通訳 さんに
こんなリクエストがあったとか。

「なるべく コンパクトに訳して」
「できるだけ短時間で訳して」

アマ通訳さんは一生懸命
応えようとしたけれど…

ボロボロだったそうで。


皆さん、これどう思います?

矛盾してると思いません?

通訳が短くなるほど講師は長く話す。

講師が長く話すほど
訳されない部分が増え、


通訳さんは、通訳以上に「要約」に
忙しくなるってことです。

案の定、この講座は主催者だけが
「密度が濃かった」と自己満足。

講師は「ちゃんと伝わっていない…」と
だんだん気が滅入り、

参加者も「ちゃんと訳されていない」と
不満だったそう。

もちろん
録音から小冊子を作ることなど
できませんでした。

そりゃそうだ!!

だいたいこの主催者、
「通訳者が話してる時間は
短ければ 短い方がいい。」
と思ってるんでしょう。


てやんでえ!
そっちがそうなら
こちとらずっと黙っててやらあ!
(落語バカになっております)


悪循環の原因は
クライアントである主催者が
時間を「量」で
捉えていたことにあります。

まあ、クライアントは通訳の
専門家ではありません。


なので、初回はプロから見れば
矛盾だらけの無茶苦茶なことを
頼んでくることもあるでしょう。

でも、そんな無茶を
2度も3度も頼まれるとなると
通訳にも問題があるようです。

つまり、
短ければ短いほど良いと
思われてもしょうがない
パフォーマンスをして
いるってことです。

本当は、初回の出だしで
いい意味で期待を裏切る
ホームランを打っちゃえばいいんです。
(これができてこそプロなんです)

「お、 今日の通訳はすごい」
「この人に任せよう」
「今日は 楽しみだ」という
空気を生みだせばいいんです。

それには、通訳者は話し手と
息を合わせること。

声のメロディーを自然に
沿わせること。

メモ帳にかじりつき続けるのではなく
話し手と同じところを見続けること。
(メモは頭に絵でとる)

ありきたりな日本語に
よりかからないこと。

こんなふうにすれば
話し手と通訳者が
2人でデュエットしているような
空気が生まれます。

話し手も ノッてきて
時間は半分でも
内容が濃くなり
言葉が生き生きとしてきます。

そして
「母国で母語で1人で話すより
ずっと調子が出る」
ようになるのです。

英語がわからない参加者も
日本語にはそんな素晴らしい
表現があったか!と
通訳を喜んで聞きます。

また、英語ができる方は
英語と日本語通訳を両方聞いて
「なるほど、そう訳すのか!」と
これまた楽しみながら聞いてくれます。

ゲスト講師が話す時間は半分でも
誰もが「よい時間」を
味わえるようになるんです。


こんな仕事ができれば
主催者から「次回も」と頼まれます。

主催者には参加希望者から
「通訳は○○さんなら申し込みます」
連絡が入るようになります。


集客にも貢献できる、という
おまけつきですね。

こうした好循環は
時間を「質」で捉えることから
始まります。

私たちの人生も
そうかもしれませんね。


【予告】4月6日土曜日たぶん午後
海外報道にダマされなくなるコツとして
私がNHKでやっていた報道分析を
ご紹介します。ぼーっとしていても
英語が聴き取れてしまう(矛盾!変態!)
ようになる可能性大です。

申込方法は次回お知らせします。


《ここからは脇道、寄り道、蛇足です。》

そういえば、通訳はなるべく短く、
というリクエストにうまいこと?応えた
大学教授の変人もいました。

東北のある大学で学会が開かれました。

ゲスト講師はアメリカの大学から
迎えられたベテランのE女史。

通訳を頼まれていたのは
留学歴もある元気なY教授。

いい感じでE女史の
お話が始まったのですが…

Y教授、ちっとも
通訳する様子がありません。

E教授も何度か途中で止まって
「ほら 訳をどうぞ」 と身振りで
促したのですが…

そのうちにやめてしまいました。

E先生はY先生には構わず
ずっと通して話してしまいました。

英語が得意でない参加者は
置いてきぼりです。


「最後にまとめて訳してくれるのかな」
「 長くて大変だろうな」
とささやく声も聞こえました。

E先生のお話が終わると!

いよいよY教授がセンターへ!!

さて、彼は何と言ったでしょう?

ジャジャジャジャジャーン!!!!

たった一言、日本語で
「はい、 今おっしゃった通りです」

それっきりです。


いや~、その手があったか!と
びっくりしました。


よい子の皆さんは
マネをしてはいけません。


おあとがよろしいようで。

■ 暗記しなくても英語の語彙力爆上がり!
 オノマトペで英日訳が自然になる
 見れば納得、解説動画つき
 たった27のラテン語源が100の
 英単語に化ける
 魔法の語源 リスト

Pin It on Pinterest