横浜ハイブリッド言葉は何でもアリ!
外国語を学ぶには実に便利な時代になりました。辞書など当たり前、オンラインの講座もあれば、海外渡航も容易です。学ぶのが面倒であれば通訳も頼めます。
でも160年ほど前、開港したばかりの横浜はどうだったでしょう?
辞書も、講座もなく、プロ通訳(通詞)もわずかなまま、いきなりいろいろな国の人たちが顔を合わせていました。日本人、アメリカ人、イギリス人、フランス人、清をはじめアジアの人たち…なんとか日々の用事を済ませなくてはなりません。
こうなると、お互いの言葉をかいつまんで復唱しながら、なんとか確認…そんなことを続けていると、言語どうしの境目がほろけてくるようで…持ち寄り言葉、つまりハイブリッドの誕生です。これが傑作。
「日本人の翻訳」(亀井秀雄著)にはこのあたりの経緯がとても面白く書かれています。
本牧の司教を名乗る人物が、来日するアメリカ人のために書いた横浜語の演習問題が載っています。もちろん、司教は日本語は書けませんから、横浜言葉もアルファベットで書き留めてあります。さあ、なんと言っているのでしょう?
Ginricky pshaw motty koy-ginricky pshaw arimasen, mar motty koy! Mar sick-sick, betto drunky drunky, koora serampan. Oh my piggy jiggy jig, watarkshee punguts sinjoe arimas.
だいたいこんな感じのようです。
人力車、持って来い。人力車、ありません。馬もってこい!馬、具合が悪くて、別当はへべれけ。鞍、こわれてます。お前、ペケ、早くしろ。私、プングツ進上あります。(私の推測も入っています)
なんとオランダ語の「どろんけん」(=酔っぱらう)、マレー語の「せらんぱん」(=壊れている)がそのまま。
傑作なのは、「bad 悪い」をworry、「churchお寺」をho terrorと写し取っているところ。
異国情緒たっぷりでバタ臭いと思われがちな横浜ですが、この何でもアリな感じは面白そう。
もし今の世界にこういうところがあったら、「正確で聴きやすい通訳」などはいったん脇において、わいわいやってみたいものです。