学生さん、その翻訳バイト大丈夫?

スカイプの向こうにいるKさんは大学生。夏休みは初めて翻訳のバイトを頼まれたって喜んでいたのに浮かない顔。
知りあいから直接頼まれたのは小学校の先生の研修で使う神経生理心理学の論文。テーマは感覚と運動の発達。勉強になると思ったけれど、量は多い、翻訳料は雀の涙、納期も短い。
とにかくやらなくちゃと初めから訳しはじめたものの…辞書を引いてばかりでちっとも進まない…そうだ先生も夏休みのはず(おいおい)、とSOSを送ってきたのでした。
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「その資料、先生たち何の目的でどう使うの?」
「さあ…」
「え…!」
これを確認せずに訳し始めるのは危険!間にコーディネーターが入っていないときはなおさら。
どんな情報がほしくてそれを訳すのか、参加者で輪読するのか、だれかが要約を発表するのか、あるいは自分の発表の資料にするのか、紙で配るのか、パワポだけか…
昔のようにきちんとした情報だけが文書化され、文書は文書に翻訳されていた時代と違うのです。情報源は多すぎるし、発信方法も多様。
当人たちが本来の意図とずれた依頼をしていることに気づかない、なんてよくあること。
こんなに翻訳代が安いなら全訳してもらおうと軽い気持ちで言っているのかもしれない。
相手の願いを一歩ふみこんで聞き出して、頼んでいる内容とずれてたら違う形を提案するくらいでちょうどいい。ずれていなければそれはそれでいい。コンシェルジュみたいでしょ。フリーでやるなら必須です。
dictionary-1799_640「辞書ひいてるの?」
「はい。カシオの。」
「そうじゃなくて中身。医学事典は?」
「ありません。G3です。」
おいおいアゲイン。
本物の道具を味方にするのも大事なこと。私は自動通訳、機械翻訳だってちっとも怖くない。今あるのが大したことないという意味ではありません。もっと進歩してもらいたい。で、一番いいのを買ったら調教して、土台の仕事はそのコにさせて、私は仕上げだけをやっていたい。
いい道具を選ぶには、自分なりの言語観を持つこと。理想の翻訳仕事手順のイメージをすること。実現していない理想イメージの隙間にぴたっとはまるものが目に入ったら手に取る。値段?学生時代とは金銭感覚変わるから大丈夫。
「ちょっと自分では難しそう…」
そりゃそうです。それが学生とプロの違いです。だから!!引き受ける前に相談して。とにかく
①相手の願いと依頼のずれをコンシェルジュとして調整。
②自分の強みにふさわしい道具を味方につける。
私は学生時代そんなこと考えてもいなかった。Kさんは15年私の先を行っている。今からやれば大丈夫。
こちらは通訳道場なので翻訳とはちょっと違いますが、炭酸強め、スリル満点です!
発声、事前準備などもお目にかけます。

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