私が授業でスラングを重視しない理由
Are you nuts?を「あなたたちは木の実ですか?」なんて訳したらあなたがnuts。これ、「あんた気が変?」のような意味。
「え、こういうの面白いです。もっと知りたいです」
うん、気持ちはわかる。使えるとちょっと楽しいしね。でも授業では優先順位高くする予定はないな。
「下品だからですか?」

ううん、そうじゃない。通訳ともなればお上品ぶるより言葉の幅を広く持つことはとても大切。ただ、こういうスラングや若い人の言葉は変化が速い。nutsなんて昔からの言い方だけれど、すぐに古くなってしまうものも沢山。アメリカの日本語学校でアメリカ人の先生が一生懸命「ナウい」なんて教えていたら、噴き出しちゃうでしょ。ネットや映画の方が早いんじゃない?
それにね、そういう言葉はぜひ仲間から吸収してほしい。日本語でもそうだったでしょ。お母さんに「どこでそんな言葉づかい覚えたの!」と叱られたのは何とも楽しい悪ガキ仲間の言葉。そうやって大人をびっくりさせるのも楽しかったでしょ?
「悪い」言葉は蜜の味、仲間のパスワードみたいなもの。先生に習うなんて野暮もいいところ。どうぞ、親ごさんや先生の目の届かないところで仲間からごっそり仕入れてください。

さて、先生は何をするかというと…文化遺産のバトンタッチです。何がどんなに一時流行しようがしまいが、これを知ることは過去と未来への「責任」だ、といえることを優先します。
それを受け取った皆さんがどこへ出しても恥ずかしくない人になりますように。
突然エリザベス女王に出会ってもうろたえずにすむような。
そして、よくぞ異郷のことばを敬意をもって学んでくれた、と感動される人になりますように。
今夜(未明)のトランプ氏就任演説、気になります。アメリカ大統領の演説には受け継がれる、こだまし続けるフレーズがある。トランプさん、tweet(さえずる)しないでbark(吠える)ばっかりしているけど、どうなることやら。