「もろびとこぞりて」はJoy to the worldじゃない?

持続可能な未来のための通訳者、冠木友紀子です。

明日はクリスマスイブ。皆さんお気に入りのクリスマスソングはどれですか?

「もろびとこぞりて」も人気のようで。
この讃美歌について、友人のお嬢さん、高校生のSさんの質問に「面白い!」とうなりました!

Sさんはどうしても納得いかない、という様子でこう言うのです。「『もろびとこぞりて』って訳の日本語が英語と違いすぎます!なんでですか?」

英語とはJoy to the world…のことですね。

理由は2つ。
1.そもそも、別の詩なんです。
「もろびとこぞりて」は讃美歌の本をよく見ると書いてあるようにPhilip Doddridgeなる方のHark the glad sound! the Saviour comesという詩の訳、というか日本語版なんです。

112という数字の下にHark the glad sound!と書いてありまして…

つまり、Joy to the worldの訳ではありません。

えええ?

昔は曲と詞の組み合わせがキッチリ決まっていなかったのです。それで、ひとつ詞を複数の曲に合わせて歌うことがよくありました。

極端ですけど、「さくら、さくら」の曲にあわせて「チューリップ」を歌ってみてください。まあ、これはやりすぎですけれど。

ことに讃美歌は、新たな土地にうまくすべりこむため、民謡や愛唱歌に宗教的な詞をあわせることが多かったようです。

2.歌えてこそ訳詞。
「もろびとこぞりて」は原詩Hark the glad sound! the Saviour comesと比べても「日本語訳」にしてはだいぶ違います。

Hark, the glad sound! the Savior comes,
the Savior promised long;
let every heart prepare a throne,
and every voice a song.

諸人(もろびと)こぞりて 迎えまつれ
久しく待ちにし 主は来ませり
主は来ませり 主は、主は来ませり

もし、まじめな訳にしたら…歌えないでしょうね。

日本に讃美歌が伝えられ、日本人のために日本語版を工夫した先達はただ日本語訳したのではなく、英語を参考に、日本語であらためて詩を書いたのですね。

明日はJoy to the worldに描かれている花嫁、花婿のモチーフをご紹介します。

1月13日「春と修羅・序」で心の羅針盤をととのえるバイリンガル・ワークショップ

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