無駄な力が入っている新人にこれを言ってもしょうがない
「力入ってるよ、力抜いて、楽にね~」
「はい!」
緊張して一生懸命な新人に先輩が声をかける。音楽でも、スポーツでも、通訳でもよくある場面です。この「はい!」の次の1回はなんとか意識的に力を抜けることもありますが、その次は見事に元通り。
なぜでしょう。
力が入っている、というのは「頭コントロール」状態です。カラダで気をつけるポイント、たとえばトマティスの骨導発声でいえば、重心の位置、胸郭の広がり、後頭部の角度、耳と目の角度…19も気をつけるポイントがあるといいます。これをアタマで指令、監督していると忙しくて、しかもバラバラ。ばらけないように身体は力を入れる。バラバラなからだをまとめるのに力が必要なのです。力が入るのは、指令に応えるための身体の精いっぱいの応答なのです。無駄ではありません。
ここで先輩が「力抜いてー」といっても、外部からの指令がひとつ増えるだけ。気をつけポイントがひとつ増えるだけ。しかも自分と矛盾する。
じゃあ、どうすれば?
頭コントロール、身体バラバラの状態で1000回でも10000回でも練習すればよいのです。
身体に動きがしみこみ、頭の指令がいらなくなり、自動化するとおのずと力が抜けます。おのずと、です。
頭のコントロールを言葉や意識で身体に譲り渡すことはできません。それがcorporeality身体的リアリティということです。
私ならなんと言うでしょう?
「力入ってるね。(これは言わなくてもいいと思っているけど、気づきを促すため)まあ、10000回やってごらん。」
10000回はなかなかできませんが、そう言われると100回くらいはちゃらいものです。体感の変化を実感するには充分です。