中韓の人名読み方のナゼ?-通訳者の楽しみ
キム・ジョンナム氏を巡ってなんともいえないニュースが続いています。
ところで中国、韓国に関するニュースを見ていて、あれ?と思うことはありませんか。
金正男氏はキンショウナンさんでもキンマサオさんでもなくキムジョンナムさん。でも習近平氏はXi Jimpingシー・ジンピンさんではなくて「しゅうきんぺい」さん。
韓国・朝鮮の人名は現地読み、中国の人名は放送国日本の音読み。
これは偶然や習慣ではなくて、ちゃんと中国、韓国と「相互主義」にもとづいて取り決めてあるのです。NHKの通訳学校でそう習いました。
相互主義とはお互いに現地読みなら現地読み、放送国読みなら放送国読みにそろえよう、とう方針。
ですから、放送国読みを互いに実践する中国CCTVなら私の名前は「クワンムー・ヨウチーヅー」、現地読みの韓国KBSでは「カブキユキコ」です。
このことはNHKの放送ガイドラインの14ページに明記してあります。通訳に関心のある方は辞書的に参照することをおすすめします。
背景としてはいくつかの事情があるようで…とある韓国の方が自分の名前をメディアで日本読みされたのに不服を申し立てた…在日韓国人の方たちの団体が現地読みの要望を申し入れた…などなど。
中国の人名は、孔子、関羽、劉邦など日本の音読みで長く親しんできたので、いきなりコンツィー、グアンユー、リウバンはカッコいいけど大変。確かに、かえって混乱するでしょう。
さて、通訳者にとって手ごわいのはどちら?
もちろん中国です。習近平氏をShoe Kim Payなんて発音しても「????」。ですから登場人物が加わるたびにアルファベット表記と発音チェックが欠かせません。調べ方は簡単。検索エンジンの翻訳サイトで確認できます。20年前じゃ考えられません。
実はこれが結構楽しいのです。どういうわけか、中国の彩り豊かな音を聴くと、ああ、この漢字は本当はそう発音してほしいのでは、と感じます。漢字の絵姿の迫力が倍加して見えます。漢字圏ならではの楽しみです。
アルファベット圏では孔子をConfuciusなんて書くんだから、だいぶ雰囲気が変わってしまう…
先日、英語で書かれた本の翻訳で、孔子の引用に珍事発見。英文から訳したうえで「コンフューシャス」と書いてあるのです。辞書を引けば孔子と出ているでしょうに。わざと?たぶん違うね。
通翻訳者は語学屋さんではありません。学習、検索上手の博覧強記であれ。
ご参考までに
- 胡錦涛 Hu Jintao
- 温家宝 Wen Jiaobo
- 毛沢東 Mao Zedong
- 周恩来 Zhou en-Lai
いよいよ2期始まります。