私達は日本語を知らない。

エキスパート通訳トレーナーの冠木友紀子です。関東では風の強い日が続きますが、いかがお過ごしですか?

どこを見てもカタカナだらけです。ソーシャルディスタンス、レジリエンス。アニマルウェルフェアなんて第五代将軍綱吉どのがたまげることでしょう。

戦時の敵国語排除に比べたら、カタカナだらけものんびりした話かもしれません。外来語を受け入れやすい言語は語彙が豊かになって生き残りやすいとも言われます。英語と日本語はことに外来語に鷹揚だと言われます。

ただ、英語がラテン語、ゲルマン諸語から外来語を受け入れるのは、おおざっぱに言えば、栃木弁に茨城弁、あるいは福島、山形あたりの語彙が入るくらいのもの。文字だって同じ。つづりを見れば語源も見当つきます。

日本語はこうはいきません。カンパニーとコンパニオンが「共にパンを食べる」という源を共にしているとはなかなか見抜けません。「同じ釜の飯を食べる」みたいな発想ね、と足元を振り返ることも容易ではありません。

ではしっかり日本語に訳しましょう!…実は、これがなかなか。

「対人距離」「復元力」「動物福祉」

無料自動翻訳でもこのくらいぱっと出てきます。でも、しっくりきますか?

大陸から学んだ漢字の恩恵ははかり知れません。ただ、特に明治以降、知的、学問的な翻訳は「西洋言語→漢字の熟語」に偏りすぎたのではないでしょうか。それがいまも、「頭に入っても腑に落ちない」翻訳、通訳を生み出し続けていると思うのです。

pixabayより

シュタイナーの思想(アントロポゾフィー)でも、こんな翻訳をよく目にします。「人間の頭部は球形をしていて…。」

おみごと、正しいです。間違っていません。

でもね、ニンゲンノトウブハキュウケイヲシテイテ…を、日本語は「あたま」で言いつくしているのではないでしょうか。

インドヨーロッパ諸語に比べて日本語の語源学は諸説あって迷宮のようですが…「あたま」は「たましい」が宿る球を「たま」と呼んだことに通じるようです。

ここまで考えると、翻訳って何やっているんだろうと思ってしまいます。でも、ここまで考えずに翻訳する能天気には戻れない、と思うのです。

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