通訳奉仕レポート★オーストラリアと釜石と

横浜 英連邦戦死者墓地にて

8月3日土曜日、横浜の英連邦戦死者墓地で、第30回の戦没捕虜追悼礼拝が無事執り行われました。

私は例年の牧師さんの閉会の辞の日英通訳だけでなく思いがけない通訳奉仕を楽しんできました。
そのきっかけは…
この礼拝にはPOW(戦争捕虜)研究会という、名探偵顔負けの調査力で戦没捕虜ひとりひとりの生涯を明らかにするスゴイボランティア団体が協力してくれています。30年以上にわたる活動実績が信頼をあつめ、捕虜たちの遺族をはじめさまざまな方がまず問い合わせるのはPOW研究会となっています。
今回の礼拝にはPOW研究会を通じて2組の特別なゲストが参加なさいました。
まず1組目は、横浜に前日入りしていた釜石の高校生と引率の大人たち。
釜石?
そう、日本中に130以上もあった強制収容所のひとつが釜石にもありました。
捕虜たちが日本製鉄釜石製鉄所働いていたところ、釜石は終戦直前に(1945年7月14日と8月9日!)2度にわたって連合軍艦隊の艦砲射撃(naval bombardment)に見舞われました。捕虜たちも多くの地元民とともに犠牲になったのです。
このことを知る地元の大人たちが高校生たちを横浜に捕虜たちのお墓参りに連れていきたいと思い立ってから7年!!!の準備を経て実現しました。
2組目はオーストラリアからのご年配のご夫婦、ダグさんとサンドラさん。
ダグさんのお父様は鶴見の収容所近くの工場で働いていましたが、終戦直前に連合軍の空襲で亡くなられました。お母さまに宛てた大量の手紙のなかには、日本の四季、蝶々や草花の豊かさを伝えるものもあったそうです。
礼拝のあと、POW研究会でこの2組を一緒に墓地案内するので冠木さんもちょっと来て、ということになり…
研究会のメンバーが高校生に日本語で説明し始めましたがダグさんとサンドラさんは「?」。
研究会メンバーで「英語ができる」人が通訳を試みると聞いていましたが見当たりません。
こりゃ、ほっとけません。

急遽、日英ウィスパしてお2人が情報のおいてきぼりにならないようにしました。
さて、ダグさんが日本の高校生にひとことお話したい、とのこと。
POW研究会の代表が「冠木さん、そのまま続けて!」と。
そりゃ、そうなるでしょうねえ。
もちろん引き受け、高校生の反応にダグさんもどんどん勢いづいて力強くおっしゃいました。
「戦争なんてバカげてる。絶対不要!War is stupid. Absolutely unnecessary!」
今回のようなイキナリ通訳、駆け出しの頃の私だったらびびっていたでしょう。
通訳は準備が8割、と本を読みまくり、単語帳を覚えまくり、3日くらいでどんな業界でも「中の人」レベルになろうと必死でした。
本番前日は緊張して眠れなくて呑み過ぎたり。本番で大成功すれば興奮してこれまた呑み過ぎたり。ヒジョーに不健全でしたね!!
それが、自分が応援したい分野が絞られて落ち着いてくると…
今日まで生きてきたことそのものが準備だ、という心境になったのです。
これ、「自分の心が向かうほう」、放っておいても毎日気になることに分野が絞られてくるのがポイントです。
そりゃ、はじめはまずエージェントの紹介でいろんな分野を駆け回ってトレンドを俯瞰する力をつけるのは大事なことです。
でも、いつまでも走り回りっぱなしでは心に「?」が浮かびませんか。
仕事とは不完全な社会の穴を埋めるこれまた不完全な愛のわざではないでしょうか。
そう思ってお互いを信じる場では不完全さはツッコミどころじゃなくてそっとカバーしあうところになる。
通訳に携わる方には心の声に導かれてそういう場で喜んでいてほしいと願います。
そこにお金がちゃんとついてきたら言うことありませんなあ!
東北も梅雨明けしましたね。猛暑の折、ご自愛ください。

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